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2018/01/25new

コラム「教育実践」Vol.6 教育のユニバーサルデザイン化を実践する

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教育のユニバーサルデザインを実践する

教育実践研究科 准教授 阿部利彦


文部科学省による調査(2012年)によると、全国の公立小中学校の通常学級に
在籍する児童生徒のうち発達障害の可能性のある小中学生は6.5%に上ると
言われています。つまり、通常の学級(40人学級)で1クラスにつき2、3人の
割合ということになりますが、さらに問題になるのは、そのうちの4割弱の
児童生徒は特別な支援を受けていない状況であるということです。
 そんな中で、発達障害のある・なしに関わらず、より多くの子どもが学びやすい
教育のデザインを目指していく「教育のユニバーサルデザイン」に着目する
現場の先生が増えてきています。

さまざまな学校を訪問させていただいていますが、教育のユニバーサルデザイン
というと「教室の刺激を減らす」といった教室の物理的環境の整備のことだと
捉えておられる先生方や、通常学級ではなく特別支援学級や特別支援学校で
行うものだと考えておられる先生方が多いようです。

私は、教育のユニバーサルデザインを

①教室環境のユニバーサルデザイン、
②授業のユニバーサルデザイン、
③人的環境(学級経営)のユニバーサルデザイン

の3つの柱で構成されていると考えます。

そしてその中でも特に「授業のユニバーサルデザイン」に焦点をあてた実践について
教育実践研究科に在籍している現場の先生方と研究しているところです。
授業のユニバーサルデザインについても、小学校での展開が中心というイメージが
強いのですが、教育実践研究科では中学校の先生が英語授業のユニバーサルデザイン化
に向けて様々な工夫を検討しています。英語に苦手意識を持っている生徒をどう
ひきつけるか、授業の冒頭、題材との出会わせ方をどう工夫して英語の世界に橋を
かけていく(方向づける)のか、本時の学びを生徒たちが「自分ごと」にできるよう
にどうむすびつけるか。マインドマップなども取り入れ、思考の見える化を図りながら
実践しておられます。

実は教育実践研究科では専門学校の先生方も多く学んでいます。
私は、専門学校の先生方は「教育のユニバーサルデザイン」にあまり興味を
持たないのではないか、と誤解していたのですが、
「私たちがやってきた工夫はまさに教育のユニバーサルデザインにつながります」
と院生の皆さんから言っていただき、かえって勇気づけられました。

製菓専門学校の先生から「教育のユニバーサルデザイン」を実践したい、という
お話があった時にもワクワクしました。

私は、料理本やテレビの料理番組などのイメージから
「見本を提示する」(視覚化)、
「ポイントを明確にする」(焦点化)、
「失敗しないためのコツを共有する」(共有化)
ことが「お菓子づくり」だと思い込んでいたのですが、
実際には製菓指導の現場ではそれらのことがあまりなされていないということを
知りました。
そこで、さっそく視覚化、焦点化、共有化を意識した指導を取り入れたところ、
要支援の学生だけでなく、まわりの学生からも「わかりやすい」「家でも練習できる」
「次にいかしたい」という多くの声を引き出すことができました。

また、教育のユニバーサルデザイン化は授業のレベルを下げる、という誤解も
いまだにあります。
しかし、配慮を要する生徒学生にとって学びやすくわかりやすい授業を
工夫・実践することは周りの生徒学生にとっても学びなおしになり、より多くの
生徒学生の達成感につながるという手ごたえを感じています。
そして、それぞれの先生が「英語が好き」「お菓子づくりが好き」であり、
先生方が学生時代に感じた「英語の魅力」や「お菓子作りの楽しさ」を授業の
ユニバーサルデザイン化を通じて生徒学生たちに伝えることができた、という
ことでしょう。
先生方が担当されている教科や分野の魅力を次世代に伝えていくための工夫が、
授業のユニバーサルデザイン化だと言えるのかも知れません。
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