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2018/02/25

コラム「教育実践」Vol.7「教師のあるべき姿」

Tweet ThisSend to Facebook | by 事務局(天野)

教師のあるべき姿

教育実践研究科 准教授 岩澤一美

私は発達障害の子どもの指導・支援を専門としていますが、発達障害と切っても
切れない問題が不登校であることから、不登校の当事者や保護者から相談を
されることが多くあります。そうした中で、中学校や高校で教員を23年も
していたのに気がつかなかったことや忘れてしまっていたことを知らされることも
少なくありません。今回はつい最近気がつかされたことについて書きたいと思います。

5月ごろから進学した高校の雰囲気になじめずに不登校になってしまった
Aさんという女の子がお母さんに付き添われて私のところにやってきたのは
6月のことでした。消え入りそうな声で学校のことを話し始めた途端、目から大粒の
涙を流し始めました。いじめられているというわけではないのだけれども、学校の
ことを考えると涙が出てきてしまう、そんな精神的にもかなり追い込まれた状態でした。
それから1か月に1~2回のペースで私のところに来ていましたが、夏休み後に
通信制高校への転校を決意し、気持ちも新たに勉強を開始する、そう思った矢先に
Aさんに変化が見られました。それは会うたびに痩せていったのです。

もともと受験勉強のため少し太ってしまったことを気にして、甘いものを控えるなど
ダイエットをしていたのは聞いていたのですが、それにしては痩せ方が尋常ではなかったため、
食生活について話を聞いてみると、糖分が気になると次には油分が気になり始め、
炭水化物系には一切手を付けていないことが分かりました。そんな状態でもまだ自分は
太っているという気持ちがあり、ますます痩せていき、お母さんには話さないという約束で、
体重を聞いてみました。すると生命維持に必要な体重を切ってしまっています。
本人も相当つらかったらしく、男性の私には話しにくいであろう生理の話もしてくれました。
このままでは命に危険が及んでしまうことを説明し、病院で治療をすることを納得させ、
翌週入院となりました。

入院中は主治医の先生と馬が合わないらしく、毎日のようにメールが来ていました。
内容は主治医の先生への怒りです。
「怒りをエネルギーに変えて、がんばれ!」
「はい!食事の量はものすごく多いんですけど、今日も完食してやりました!」
入院は1か月の予定でしたが、予定を大幅に短縮して2週間で退院しました。

こうしたケースでは退院後も経過を観察するために継続看護を担当する看護師さんがつきます。
退院の日、この看護師さんが本人と面談をし、今一番話をしたい人というところで私の名前を
Aさんが挙げたそうです。一番話をしやすいとも言っていたそうです。その理由を看護師さんが
尋ねたところ、「私を信用してくれるから」と答えたとのことでした。
こうしたケースではよく子どもは「1番信頼しているから」と答えます。
それゆえ、その看護師さんは、かなり驚いたとおっしゃっていました。

この話を聞いたときに、私はハッとしました。管理職をしているときに教員希望の方の面接で
「生徒に信頼される教師になりたい」という答えをよく聞きました。その時は何も感じなかった
ことなのですが、Aさんの言葉で気がつかされたのが、子どもに信頼されることは大切なのですが、
信頼される前に教師自身がすることがあるではないか、それは教師自身が子どもを信用するという
ことだということです。教師自身が子どもを信用しなければ子どもの信頼はない、
これが教師のあるべき姿なのではないでしょうか。


09:00 | コラム「教育実践」