コラム「教育実践」

コラム「教育実践」 >> 記事詳細

2018/04/25

コラム「教育実践」vol.8「児童生徒の授業中のつぶやきにどう応えるか」

Tweet ThisSend to Facebook | by 事務局(天野)

児童生徒の授業中のつぶやきにどう応えるか?
教育実践研究科・教授 西村哲雄

1 はじめに 
教育実践研究科の学生には、幼小・中・高等学校教員、学芸員、看護師、
看護専門学校教員、料理専門学校教員、短期大学教員そしてストレートマスターなど
様々な職種の教員等が大学院生として学んでいる。学生のモチベションは高く、
日々行われているそれぞれの授業実践での悩みを解決すべく学んでいる。そこには、
自らの指導者としての隘路があり、よりよい授業を進めていくための指導能力の
向上を目指す姿がある。 そのような学生に対して、私の分野は理科教育を通した
教育実践から導き出した指導方法の工夫・改善を実践的に示し、それぞれの分野で
指導的立場にある大学院生の資質能力の向上に寄与したいと願っている。

2 実感を伴った理解 
現行の小学校学習指導要領解説理科編の目標は、自然に親しみ、見通しをもって観察、
実験などを行い、問題解決の能力と自然を愛する心情を育てるとともに、
自然の事物・現象についての実感を伴った理解を図り、科学的な見方や考え方を養う。
であり、その中で“実感を伴った理解”とは、要約すると①具体的な体験を通して
形作られる理解②主体的な問題解決を通して得られる理解③実際の自然や生活との
関係づけた理解とある。これらについては、どの教科等、場面においても当てはまる。
したがって、児童、生徒、学生そして研修などの受講生にとっても、この“実感を伴った
理解”を図る具体的な手立てについて考える。授業や研修会など講義の対象者の発達段階
や経験値、レディネス状態、環境などによって異なるものの、対象者が心の底から納得する
ためには、授業者が幅広い知識と深い専門性を合わせ持っていることがカギを握る。

一つの授業を構成するとき、全体の目標、単元の目標、指導計画などを視野に入れ、
その授業のねらいを考え、指導方法の工夫・改善を創造的に行うように常に考えたい。
対象の児童生徒、学生、研修受講生などのレディネス状態を把握しながら、授業の導入、
展開、まとめをシミュレーションすることを心掛けたい。

(1) 動機付け 
主体的に問題解決を図るようにするためには、動機付けは大切な要素である。
授業の成否はこの動機付けにあるといっても過言ではない。動機づけがうまくマッチングすると、
その後の展開はひとりでに(自ら主体的に)流れ、指導者は適切な時期に、考えるヒントを
投げかけだけで機能していきます。例えば、『圧力や浮力について理解する』ことをねらいとして、
ペットボトルとプラスチック製醬油のタレビン及びカラーサンドで浮沈子を製作する。
学部の初等教科指導法(理科)において、モデルを示し製作したとき、受講生から
「なかなか難しく、うまくできないので、カラーサンド何gに対し水何gか示してほしい。」と
いう意見が出されました。確かにそのことも重要ですが、モデリングのときに、製作の微妙な
ヒントを与えることの方が重要と思い、「タレビンにカラーサンドを0.5㎝の高さまで入れ、
水を注ぎ、ふたを閉めて、タレビンを洗面器の水に少し浮く程度に調整する。沈みすぎた場合は、
タレビンの水を1~2滴捨て、浮きすぎた場合は水を1~2滴加えて微調整する。」と助言した。
そして約500mlのペットボトルに、そのタレビンを入れ、ふたを閉め、再度から手の力で押すと、
中のタレビンが下にス―と落ちていき、手の力を緩めるとス―と浮き、とても喜んで達成感に
浸っていました。その現象から“なぜ?どうして?というつぶやき”が出てきます。



(2)主体的・対話的な深い学び
こうした“仕掛け”によって興味・関心を引き付け、「なぜ?どうして?」という疑問が
湧いてきます。このときに、主体的に問題解決をしようという気持ちが芽生えてきます。
そこで、「それを考えるのは皆さんです。グループの他の人と話し合ってください。」と
投げかけていきます。 なかなか問題解決に至らないグループに対しては、「プールで泳げない
子供が浮き輪を使っていますが、栓が少し緩んでいたら?」「山登りの経験は?山頂で休憩して、
袋に入っているスナック菓子を食べようとして、リュックサックから出したとき、袋はどう
なっていますか?」「お風呂に入るとき、湯船の水を手で触って、温かいのでザブンと入った
とき、お尻が冷たかった経験は?」と、日常生活と関連付けて考えるヒントを提示します。
さらには、キーワードとして、空気の圧力、水の圧力、浮力、密度、比重などを出して、
知的好奇心誘発し、問題解決に向けた、主体的な学び、対話的な学び、そして深い学びへと
つなげていきます。 また、教育実践研究科のプロジェクト研究Ⅰのガイダンスにおける
20分の自己紹介で、入学生をどのように引き付けていくかを考えたとき、上記写真のような
カラーサンドの入った醤油のタレビン(浮沈子)が浮き沈みする動画(24秒)をスマホで撮り、
PCから全国の受講者に配信しました。にまず最初に提示しました。ペットボトルにをつかんで
いる圧力をかけるためにつかんでいる手を見せない“手品”として導入しました。その後に、
浮沈子を製作させオープンエンドで、「興味を持った方は、是非私の実践研究室に来て、
プロジェクト研究Ⅰの学びを追究してください」と自己アピールに使った。 このように受講生の
導入での気づきやつぶやきを表情や発言などを通して吸い上げていく指導者としての感性を
磨いてほしい。ましてや幼児児童生徒は、私たちが当たり前と思っていることについて、
「どうして?なぜ?」と素朴な疑問を投げかけてきます。そうした疑問に応えられるよう、
自らが深い学びをそれぞれの分野で追究してほしいものです。

3 自然の事象に関する概念形成 
現行の小学校学習指導要領(理科)から理科の内容区分が中学校と整合性が取れるように
「A物質・エネルギー」と「B生命・地球」に表記された。そこには、『「エネルギー」、「粒子」
、「生命」、「地球」といった科学の基本的な見方や概念は基礎的・基本的な知識・技能の着実な
定着を図る観点から、子供たちの発達の段階を踏まえ小・中・高等学校を通じた理科の内容の
構造化を図るために設けられた柱である。』とある。 その中で、「地球」については、
『「地球」といった科学の基本的な見方や概念は、さらに、「地球の内部」「地球の表面」
「地球の周辺」に分けて考えられる。』とある。「地球の内部」については小学校では、
5年生で「流水の働き」、6年生で「土地のつくりと変化」を学び、は、中学校では、1年生で
「火山と地震」「地層の重なりと過去の様子」を学びます。小学校6年生の「(4)土地のつくりと
変化」の「ウ 土地は、火山の噴火や地震によって変化すること。」では、内容の取扱いで
『…(略)…大きな地震によって、土地に地割れが生じたり、断層が現れたり、崖が崩れたりする。
その結果、土地の様子が大きく変化することがある。ここでは、自然災害と関係づけながら、
火山の活動や地震によって土地が変化した様子を観察したり。コンピュータシミュレーションや
映像、図書などの資料を基に調べ、過去に起こった火山の活動や大きな地震によって
土地が変化したことを推論するとともに、将来にも起こる可能性を考え、土地が変化することを
捉えるようにする。』とある。 この「(4)土地のつくりと変化」における時間や空間の概念形成を
どのように図っていくことは重要であるが、実際の授業において具体的な観察・実験がなかなか
難しく、イメージ化ができにくい内容である。観察に適した露頭を見いだすことすらできにくい
環境である。そこで、上記のような資料を基に土地の変化を推論していくことになる。
大地の変化を視覚化、モデル化する動画を撮り、オリジナルな褶曲や断層を観察し、地層の
重なりはどのようになっているのか?断層面の奥はどのようになっているのか?などの児童生徒の
疑問(つぶやき)にどのように応えていくのか「初等教科教育法(理科)」、「理科」などに
おける実践事例を示したい。(1) イメージ化、モデル化⇒概念形成  実感を伴った理解を図る
ためには、どのように指導方法の工夫・改善を行うのか? 小学校の免許状を取得しようとして
いる学生に対して、教科に関する科目・理科で実践。)




写真のように、透明なトレイ容器にコーヒーの出がらしと小麦粉を使って3 層の地層モデルを作成し、
発泡スチロール板で押して逆断層や褶曲のモデル化を行った。
モデル実験は、主体性を担保するよう
一人一人が地層モデルを作成できるよう机上で行えるよう個別化した。自分独自の褶曲や断層をつくり、
写真や動画で常に再生でき、家族に話すことによって一層の理解につながる。 それぞれの 3 層モデルを
発泡スチロール板で押し、それをスマートフォン(携帯電話、デジタル カメラなど )でコマドリ写真
撮影(動画撮影)し、再生可能なようにして、考察に用いた。自らが見ている側の地層のでき方と反対側
から撮った動画を再生して見ると、地層のでき方も異なることが視覚的に理解し、地層の広がりも
理解できる。 考察においては、主体的で協働的に話し合い活動を通した深い学びを意識して班ごとに討論
させた。自らが授業を行うとして、学習指導案を作成する上で、この“地層モデル実験”の有効性について
①興味・関心・意欲②主体性③日常生活との関連④体験的な学習 ⑤学習の個別化⑥動画や写真の有効性
などの視点を意識して話し合わせた。

<地層のモデルを発泡スチロール板で押したときの変化の予想と結果> 
 =学生の予想と結果の考察例=

 ○予想とは違い、白い部分が複雑に入り組んだ結果となった。  
4人グループで行ったが、みんな違った結果になり、コーヒー豆の量、小麦粉の量、平らにする
させ方、固め方、発泡スチロール板の動かし方がそれぞれ違うことで結果も異なるということが、
体験的な学びを通して実感、経験できました。準備するのは大変ですが、私も教師になったときに
、「子どもたちが自ら学ぶ意欲」をもつ授業をつくりたいと思いました。 ○予想と違って、大地で
起こっていることが目の前で見ることができたのが嬉しく感動でした。断層ができるのは、
腕の力が瞬間かかったとき、ズッと地層が流れることも体感できました。人と比べることで地盤の
固さの違いも予想でき、話しではなんとなくしかわからないことが、体験で実感になることが
とても理解できました。 ○予想では、力を加えていくことにより、地層の位置関係などは変わらず、
上に積み重なると思っていたが、力を加えていくことにより地層が切れてだんだんと乗り上がって
いくという結果になった。逆断層ができた。予想とは違う結果となり、面白かった。

 ○予想では、平らなラインは維持したまま、右斜め上へ移動すると考えた。実際の結果は、地層が
乗りあがることにより、いくつかの逆断層ができた(Zの形)。また、地層の固め方(強度)の
違いから、一人ひとり異なる断層ができあがった。 ○予想したときは、プレート型のように左側の
地層が重なっていくと思っていたが、実際は白い層が積み重なっていく結果となった。このような
体験は、グループで 1つだけで活動するのではなく、一人一人に体験させることで周りの人と
比較することもでき、新たな発見や共有できるため、個に実験させることの重要性を学ぶことが
できた。 
 ○個別に地層をつくるため、作り方(固め方、量の多さ)によってはみんなのと違う断層を見る
ことができました。予想の絵が若干、結果の絵と似ていますが、イメージしていたのとは違って
いました。私自身のはロールケーキみたいな形で、周りの人のはカクカクした断層ができていて、
実際に自分自身で実験に取り組まないと実感することは難しいと感じました。やり方によっては、
クリスマスツリーの形にできたり、様々な断層ができるので興味深い。

(2) 学習の個別化
実感を伴った理解の徹底を図っていくためには、児童生徒の興味・関心・意欲を刺激し、なぜ?
ということを解決していくための知的好奇心を喚起し、主体性をもって、予測しながら観察・実験
を行い、日常生活と関連づけて理解を図ることは言うまでもない。さらに、学習の個別化を図る
ことによって、みんなと違う自分自身の完成品(この場合はスマホによる動画が自分自身の断層や
褶曲のオリジナル作品)をもつことによって、みんなと違う原因が力の加減(プレートの動き)
や地層(コーヒー豆や小麦粉)の固め方、壁(発泡スチロール)の傾きなど、発展的に学べる
素材である。また、透明なトレイの反対側(裏側)の地層のでき方は、表側とも違うし、地層の
できる年代の逆転、衝上断層のでき方や地震が起こる元々のエネルギーなど様々な学習活動が
期待される。



10:00 | コラム「教育実践」