コラム「教育実践」

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2017/08/25new

コラム「教育実践」vol.1「教育現場の先生方は単なる実務家ですか」

Tweet ThisSend to Facebook | by 事務局(天野)

教育現場の先生方は単なる実務家ですか

教育実践研究科 教授・研究科長 大野精一

 

 幼稚園や小学校、中学校、高等学校、そして専門学校等で教職についている先生方(教育実践家)は単なる実務家なのでしょうか。先生方は、キャリア展望としてベテランの実務家(エキスパート)を目指せばいいのでしょうか。

ここでは私が担当している授業科目「専門職者としての倫理規範」の内容を踏まえて考えたいと思います。この授業では教育学者の佐藤学氏や「省察的実践」の考察で知られるドナルド・A. ショーン氏等、たくさんの文献を参照しながら、受講生のみなさんと議論しています。関連する文献の提示は省かせてもらいますが、その一端をご紹介します。

 

先生方の周囲には授業や生徒(学生)指導のベテランがいて、すごいとお思いのことでしょう。こうしたベテランの先生と同じように、わかりやすい授業や説得力のある指導を目指して日々努力を重ねることになりますが、その際にベテランの先生にそのコツを訊いても必ずしもこちらの満足のいく答えが返ってくるとは限りません。どうしてでしょうか。

 

その答えが多くの場合、今こうして「実務」としてうまく行っている授業等の留意点や配慮事項に関わることだからだと思います。そこで示されることは気づきにくい観点やスキルがあるにしても、それほど今の自分の実践から理解し難いことでもなければ、はるか彼方にある究極の目標でもないはずです。いつかはこの自分の手に届くものです。

 

恐らくこのイメージは、ベテラン職人から教えを受けるもので、最良の意味での「徒弟」関係(師匠-弟子)ではないでしょうか。こうしたプロセスで授業や生徒(学生)指導の「技(ワザ)を磨く」わけです。本研究科(専門職学位課程)に「実務家教員」というカテゴリーでベテランの教師経験者がいるのはこうした意味合いもあります。

 

ただ難しいのは、実務家としてのベテラン教員がご自身の活動を他者に伝達可能な形で表現し得るかと言うことです。結果としてすばらしい実践が生起していることはわかっても、何が起きているのか、何故起きているのかは、日々に多忙でせわしない毎日を送るベテラン実務家ご本人ですら正確に把握し得ていないかも知れません。そもそもそこに暗黙知等も含むとすれば、ご本人が表現する以上のものが生起してしまっているのですから、これは当然のことと思います。

 

われわれはここで問題を変換する必要があります。現に生じているすばらしい授業や生徒(学生)指導を「再現」しようとするのではなく、ベテランの先生が現実に推移する個々の授業や生徒(学生)指導をしながら、よりよいものにすべくどんな風に現実を捉え、その結果としてどんな方略がいいのか等を考え実践しているのかを知ることです。新人の先生が考えもしない観点や配慮、その時の状況定義が出てくるでしょう。ベテランの実務家の具体的な生きた実践から学ぶとは、こうしたことではないでしょうか。

 

本学の授業で焦点化している学び合いがここにあります。これは単なる「(自然)科学的」な研究者とは異なった専門家像に立脚するに違いありません。むしろ教育実践の専門性はこうした視角からハッキリするものであると考えています。

 

ご一緒に教育実践のあり方を学びませんか?

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