専門職者としての信念をもとに、新卒看護師の支援プログラムを作る


曽根 光子さん(教育実践研究科在学生/看護師/大阪府)

 認定看護師として働いていて、いろいろな分野の認定看護師で協同して、病院の中でそれぞれ自分の専門分野の講義をするという研修のプログラムをやってきました。果たしてそれがどのように病院の中で生かされているのかというところに疑問を感じて、研修の評価をするようになりました。手探りでいろいろな文献を見ながら、評価のやり方を模索していましたが、なんかこれ勉強足りないんじゃないのかなとちらっと思い始めました。また、新卒看護師の教育も担当するようになりましたが、彼らが受けてきた教育や、最新の看護教育の実情もよく知らないまま担当していました。自分が今まで育てられてきた方法で教育してもうまくいかないと壁にぶち当たった感じで、どこかで学ばなければと強く思いました。


 大学院に入って、専門職者としての職能開発という授業で、自分の過去の実践を振り返ってひたすら言葉に出して語るということをしました。認定看護師の資格を取るための実習で、患者さんを担当して看護を展開したのですが、その患者さんはホームレスの方でした。退院したらいずれは公園に帰っていく。良かれと思ってその人のために行政のサービスなどおすすめしたのですが、その人にとってしっくり来ていない感じがありました。受け入れてはくれるけれど、よしそれやりますという感じではなくて。彼との関わりを通じて、医療者として良かれと思う支援が、必ずしもその人にとっての幸せには繋がらないということがわかってきました。病と共に生きる人を支援するには、その人の生き方を知って、その人の人生における病がもたらす意味を知って、そこをしっかり受け止めた上で、医療の専門としての自分の考えを提示しながら折り合いをつけていく。その人らしく生きていくための方策を一緒に考えて支援していくことが、自分の役割なのだと。今までなんとなくそう思いながら実践してきたのですが、言葉にしてみて改めて自らの専門職者としての信念に気づかされました。

 プロジェクト研究では、新卒看護師が職務を継続するために必要な支援を明らかにし、その支援プログラムの作成に取り組んでいます。まず、卒後2・3年目の看護師を対象としてアンケートとインタビューを行い、辞めずに続けられた要因を調査したところ、次の4つの支援の必要性見えてきました。同期の仲間と支え合う関係をつくる「繋がり支援」。自己を振り返るための「省察支援」。周囲の人たちからの承認に加えて自分の成長を自分で認められるようにする「成長の実感支援」。省察した内容から課題を見出し、目標を設定できるようにする「目標設定支援」。これらを育む支援プログラムとして提案するところまでを1年目のプロジェクト研究として行いました。2年目の現在はこれらの支援を組み込んだプログラムを実行しているところです。

 実は以前は、なんとかこの人たちをどうにかしなければと思っていたのですが、看護師としての自分の信念に照らし合わせていくと、新看護師の持つ力を引き出して支えるのが私の役割だなというように考えが変わりました。現在の支援プログラムはこの信念が反映されたものになっています。


 大学院修了後も、研究を続けるとともに、現場での実践も続けていきたいと考えています。現在、新卒だけではなくその指導者の育成にも関わっていて、新卒とともにその指導者も一緒に成長させていくという役割を担っています。病棟や外来で認定看護師としての看護実践も続けているので時間のやりくりが大変ですが、それでも彼らの成長を間近で見て取れることがやりがいになっています。

 学びたいという気持ちがあれば、何も恐れることなく大学院に入学してほしいです。気持ちさえあれば、年齢は関係なく、自分次第で学びはどんどん広がります。