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「理論と実践を往還する視点」は、教育者としての自分を成長させる原動力

田中典枝 さん

2025年3月教育学研究科博士後期課程修了生/大学教員/島根県

「理論と実践を往還する視点」は、教育者としての自分を成長させる原動力-田中典枝さん

 星槎大学大学院博士後期課程への進学を決意したのは、日本の学校英語教育現場において、中学・高校と英語を学習しているにもかかわらず、日本人の口頭英語運用能力が十分に伸びない要因を明らかにしたいと考えたからです。
 大学院進学前は、海外で教育関連の仕事に携わっていました。帰国後現在の勤務校で大学生と接するなかで、彼らが日常会話レベルの英語力を身につけたいと強く望んでいることを感じました。しかし、知識の指導だけではスピーキング力向上には限界があることを痛感しました。この経験から、学習者が英語運用能力を習得するための意欲を高め、主体的かつ継続的に学習に取り組むための要因を理論的・実証的に明らかにしたいと考えるようになりました。
 修士課程では学習動機づけ理論を基盤に研究を進めましたが、実証的検討が十分でなかったことが課題として残りました。そこで博士課程では、学習者が自律的に学びを継続する方略を質的に分析し、その分析結果を授業実践に取り入れることにより教育現場で活用できる理論的枠組みを構築することを目指しました。博士論文では、これからの多文化社会において英語を話すことが私たちの生活に必要不可欠であり、若者が豊かな人生を送るための重要な要素であることを示すことができたと考えています。

 博士課程では、英語の音声活動を教育現場に導入することが学習意欲の向上に及ぼす影響効果について、理論的かつ実証的に明らかにしました。まず、日本の学校英語教育においてこれまで十分に扱われてこなかった「聞く」「話す」の学習活動の導入がもたらす学習効果を、文献調査を通して検討しました。次に、海外での長期滞在経験がないにもかかわらず、高い英語運用能力を有する学習者の学習方略を質的に分析し、口頭英語運用能力を高める要因を明らかにしました。さらに質的分析結果を踏まえて授業実践を行い、理論と実践を往還しながら、主体的かつ自律的な英語学習を支援するための在り方を検討しました。
 博士論文の執筆を進めるなかで、自分が何を明らかにしようとしているのかを見失うこともあり、研究は決して順調とは言えませんでした。何度も挫折しかけましたが、そのたびに「目の前にチャンスがあるなら、何があっても自らあきらめてはいけない」という指導教員の先生からの励ましの言葉に支えられました。また、論文執筆における、自らの言葉に責任を持つこと、慎重に言葉を選ぶことなど、研究者としての基本姿勢についても厳しくご指導いただきました。最後まで私を信じ、博士論文の完成まで支えてくださった先生方の姿を通して、これからは私自身が、学生を信じて支援する立場として成長していかなければならないと強く感じました。


学び続ける姿勢を忘れず、学生のために何ができるのかを問い続けていきたい

 最後まで私を支え、導いてくださった先生方のご指導は、現在の私の教育実践および研究活動の両面に活かされています。研究を通して培った理論的知見や質的分析から得られた示唆は、大学生とかかわるなかで、学習者の内面的側面に配慮した教育実践を行う際の重要な基盤となっています。特に、学習者が英語学習に意義を見出し、主体的に学びを継続できるよう支援することを重視し、動機づけを高める仕組みを授業のなかに取り入れています。博士課程で身につけた「理論と実践を往還する視点」は、今後も教育者としての自分を成長させる原動力となるでしょう。学び続ける姿勢を忘れず、大学教員として学生のために何ができるのかを問い続けていきたいと考えています。