困り感を持っている子どもたちが「学校に来ることが楽しいな」と感じられる場所を作りたい
村上由夏 さん
2023年3月教育学研究科修士課程修了生/小学校教員/福岡県
様々な教育課題の直面する中、はたして今の学校現場でインクルーシブ教育はできていると言えるのだろうか、と考えたことが入学しようと思ったきっかけです。そもそも、私自身が正しくインクルーシブ教育を理解していないかもしれないという危機感から「学びなおしたい!」と感じたことで大学院探しが始まりました。けれども、大好きな仕事は休みたくないという思いもありました。
そこで、オンラインでの学習が可能であり、サポートも手厚い星槎大学大学院を選んだのです。パソコンさえあればどこでも学ぶことができる環境は魅力的です。仕事と学びの両立が大変であることも予想はしていましたが、勤務校の先生方の後押しもあったこと。そして、大学生の時にインクルーシブ教育に初めて出会った本が山口薫先生の書いたものでもあったことが決め手になった気がします。これからの自分に必要な知識を「正しく知る」ことができる環境と先生方との出会いを期待して入学を決めました。
星槎大学大学院では、主に特別支援教育について学びました。通常学級に在籍する障害の有無に関わらず困り感を持っている子どもたちが「学校に来ることが楽しいな。」と感じてもらえる場所を作りたかったからです。漠然と「こんなクラス作りがしたい!」という思いはあっても、研究となるとどこに焦点を当てたらよいのか…。そんな時に、ゼミの皆さんや先生方からアドバイスをもらい、「対話」に焦点をあてることにしました。「対話」なら話すことや図や文で書くことなど多岐にわたります。
そのため、研究主題は「通常学級における「対話的な学び」の実現への手立ての検討ー発達障害児の在籍する通常学級担任への授業実践に関する質問紙調査を通じてー」としました。具体的には、質問紙を教員に配布しその回答から対話による手立ての5つの要素を明らかにしました。中には、多様性の尊重や授業やクラスの雰囲気づくりに工夫を凝らしている先生方の姿が見受けられました。その反面、担任を取り巻く教員の理解や協力が不可欠であることや、教科によって対話的な学びには差があること、教材研究に課題意識を持っていることがわかりました。私自身が、大学院で学びたいと思ったときと同じ課題意識を持ち、悩んでいる教員がいることに気づかせてもらうとともに、対話的な学びができる環境づくりの必要性を感じているところです。
また、大学院での学修は、研究の他にも様々な内容の科目履修があります。様々な理論を学ぶことで、自分自身が行う学級経営や授業を行う際の礎を築くことができました。基礎があれば実態に合わせて応用できます。私にとって理論という基礎を学ぶことは、実践に活かすことができる即戦力を得ることができたことと等しく、何よりも新たな学びを得る喜びが最も大きかったように思います。2年という短い期間でしたが、これまでの学びを子どもたちに還元できる教員でいたいと思います。
通常学級にこそ必要な特別支援教育の学び
児童ひとりひとりに合った学級経営を完璧に行うことは難しいと思います。けれども、子どもたちの困り感にどう寄り添えるのかを考えながら学級経営ができるのはこれまでの学びがあるからだと思います。応用行動分析など心理学を学んだことや学級経営法を学ぶことで得た「子どもを見る力」「子どもにはどう見えているのかを想像する力」は今でも大切にしています。
また、子どもたちの中には「困っている子ども」もいます。怒ることや泣くこと、教室から飛び出すことでサインを送ってくれることもありますが、サインがわかりにくい子どももいます。そんな子どもたちと幸せな毎日を送りたくて特別支援教育について学びました。彼らが平等に居心地よく過ごすには、一人一人の様子を見取ることが必要です。そのための視点を2年間で学ぶことができたことは私にとって、とても大きな収穫でした。
何よりも、特別支援教育を学ぶことは特別支援学校や特別支援学級だけに必要なのではなく、通常学級にこそ必要であると改めて実感できました。