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2023.04.26

評論「スーダン内戦」今こそ国連の出番だ-日本も和平調停に責務果たせ

執筆:佐々木 伸 教授 (星槎大学大学院 教育学研究科)

 内戦の続くアフリカのスーダンでは外国人退避の動きが加速しており、日本も自衛隊機を派遣して邦人を救援した。全ての関係当事者がこうした人々の移動の安全を尊重するよう求めたい。

 内戦は国軍と準軍事組織による権力闘争の様相だが、最大の被害者は一般国民だ。これ以上の被害拡大を食い止めるには恒久的な停戦が必要だ。

 そのためにも国連の介入は不可欠であり、各国との連携を密にしながら直ちに調停に動くべきだ。先進7カ国(G7)の議長国である日本も和平確立のため、責務を果たさなければならない。

 スーダンはアフリカで3番目の広さを持つ大国だ。石油や金などの鉱物資源が豊富で、交易の大動脈、紅海に面する戦略的な要衝でもある。

 しかし、同国では長らく独裁政権が君臨し、国民は圧政にあえいできた。一時はイスラム過激派の拠点にもなった。

 転機が訪れたのは2019年。反政府デモをきっかけとした軍のクーデターで独裁政権が崩壊し、文民主導の暫定政府が発足した。だが、軍は2年後に再びクーデターを起こし、民主派を排除して事実上の軍事政権である統治評議会を樹立した。

 昨年末、評議会は欧米やアラブ諸国の圧力を受け、いったんは民主勢力との間で民政移管に向けた「枠組み」に合意した。しかし軍と準軍事組織「即応支援部隊(RSF)」はRSFの軍編入問題で対立、戦闘に発展した。

 評議会議長は軍トップのブルハン将軍で、副議長はRSFのダガロ司令官だ。両者は住民虐殺など世界最悪の人道危機と評された西部の「ダルフール紛争」で軍歴を積んだ仲だが、今や内戦の敵同士となった。

 ダガロ氏はアラブ首長国連邦(UAE)の要請に応じ、イエメン内戦にRSFの戦闘部隊を派遣して大金を稼ぎ、また金採掘の利権を占有していると伝えられており、軍との統合で権力基盤が消失することを恐れたと見られている。

 国軍の勢力拡大を狙っていたブルハン議長もこのまま「二重の権力構造」が続くことを容認できなかったようだ。議長は隣国のエジプトとの関係を強化しており、内戦には周辺各国の思惑も複雑に絡み合っている。

 しかし、権力を維持するため、私利私欲のために暴力に訴えるのは許されることではない。ブルハン議長とダガロ司令官には自分のためにではなく、国民のために資する行動を取るよう要求したい。 

 両勢力の軍事力は拮抗(きっこう)しており、このままでは戦闘が泥沼化しかねない。国連などによると、国民の約3分の1に当たる1580万人が人道支援を必要としているとされ、食料不足が深刻化し、医療支援が滞ることが心配だ。

 国連はロシアのウクライナ侵攻を阻止できず、機能不全を露呈したが、スーダン内戦は紛争の調停者としての力を発揮する時だ。グテレス事務総長は自らイニシアチブを取る姿勢を示し、日本も事務総長と連携して和平に向けて尽力しなければならない。