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2025.10.13

評論「人質全員の解放で合意」◎パレスチナの和平確立につなげよイスラエルとハマス、恒久停戦急げ

執筆:星槎大学大学院教授 佐々木伸

イスラエルとイスラム組織ハマスは人質全員の解放とイスラエル軍のパレ
スチナ自治区ガザ撤退で合意した。米国のトランプ大統領の「和平計画」に
基づくもので、同氏は自ら中東に乗り込んで合意を確定させる。
 「ガザ戦争」は開戦から2年を契機に大きな転機を迎えたが、まずはハマ
スの決断を歓迎したい。だが、ハマスの武装解除や軍のガザ撤退の時期、範
囲などの協議の決着はついていない。戦闘を再開させてはならない。合意を
和平確立につなげる必要がある。米国など国際社会は双方が合意破りをしな
いよう全力で監視すべきだ。


▼独立国家の必要性を世界が認識
 これまでのパレスチナ住民の犠牲者は6万7千人を超え、約50万人が飢
餓に直面するなど人道危機は深まっていた。ガザは同軍の無差別攻撃でほぼ
廃虚となり、ハマスの組織は壊滅状態。「玉砕」の瀬戸際に追い込まれてい
た。
 ハマスの最大の交渉カードは人質だ。人質は48人で、生存者は20人前
後とされる。イスラエルのネタニヤフ首相は軍事的圧力が人質を解放させる
として攻撃を激化。人質の命は二の次だった。
トランプ提案は「人質全員の解放」と「ハマス側の安全保証」を交換する
のが主眼。戦後統治からの排除などハマスの要求を拒否している。ハマス戦
闘員には恩赦が与えられ、安全なルートでガザ退去も許される。
 ハマスの最大の懸念は人質を解放すれば自分たちを守る術がなくなる点だ
。イスラエルが合意を順守するという保証は一切ない。イスラエルに攻撃さ
せない「あらゆる措置を講じる」というトランプ氏の約束だけが頼りなのだ

しかし、リスクはあってもハマスは今回、人質解放に応じ、銃を置くべき
だ。イスラエルによるパレスチナ抑圧の状況や「独立国家」の必要性を世界
にあらためて認識させた。強大なイスラエルを相手にその主張を十分に示し
たのではないか。
9月の国連総会の場で、フランスや英国など10カ国がパレスチナ国家の
承認を表明したのは「ガザ戦争」の惨状をストップさせるためのイスラエル
への圧力の一環だった。矛を収め、政治闘争で新たな闘いを挑むべきだ。

▼トランプ大統領はイスラエル制御を
 心配なのは今後のイスラエルの出方だ。ネタニヤフ氏の本音は「戦闘の継
続」だろう。人質が解放された後、ハマスが合意を破ったなどとして一方的
に戦闘を再開する腹なのではないか。というのもイスラエルの極右政党は首
相が合意を結べば政権を離脱するとどう喝しており、政権維持には戦闘続行
こそが唯一の方法だからだ。
最近のイスラエルの世論調査によると、66%が今回の合意に賛同し、45%
が停戦後にネタニヤフ首相が即座に辞任すべきだと回答した。一昨年のハマ
スの奇襲攻撃を許した首相の責任を厳しく問うているのだ。
 
トランプ氏の努力にも敬意を表する。終戦を急いでいるのは「ノーベル平
和賞狙い」と、やゆされているが、米国の介入なしでは合意はなかった。同
氏がイスラエルを制御し、がれきの山のガザに平和が到来することを望みた
い。