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2025.07.16

評論「米国が合意を保証せよ 難航するガザの停戦協議の行方」

執筆:佐々木 伸 教授(星槎大学大学院 教育学研究科)

パレスチナ自治区ガザの停戦を巡るイスラエルとイスラム組織ハマスの協議が土壇場
で難航している。恒久停戦の見通しやイスラエル軍の撤退範囲などで対立が解消してい
ないためだ。
 双方の不信感はあまりに大きい。特にハマスはイスラエルが過去に停戦合意を破棄し
て戦闘を再開したとの恨みが強い。
 ハマスにとって停戦合意が実効性を持つためには、イスラエルを抑えることができる
「米国の保証」が必要だ。トランプ政権は合意の枠組みを維持する「保証人」になる必
要がある。
 今回の和平案は「60日間の停戦と引き換えに人質10人を解放、約10遺体を返還
する」という内容のようだ。トランプ大統領は合意が近いと期待を表明、訪米中だった
イスラエルのネタニヤフ首相と2日連続で会談するなど打開を図ったが、進展はみられ
なかった。

▼最大の対立点
 最大の対立点は、停戦が恒久停戦につながるかどうかだ。ハマスは恒久停戦が実現し
なければ意味がないと主張し、イスラエルはハマスの「軍事力と統治能力の解体」が恒
久停戦の最低条件だとして譲らない。
 イスラエルは前回の停戦時と同様、「停戦中に恒久停戦の協議を行う」としているが
、何度も裏切られたハマスは納得できまい。ハマスの同意を得るためには米国が「イス
ラエルの一方的な戦闘再開は認めない」と保証することが不可欠だろう。
 協議が遅れればそれだけイスラエル軍の無差別攻撃による死者が増える。すでにガザ
での犠牲者は5万8千人を超え、とりわけ5月以降はイスラエルと米国が主導する「ガ
ザ人道財団」の支援物資配給所付近などで約800人が死亡した。軍の狙い撃ちとみら
れている。

▼「強制収容所」の創設
 看過できないのは、イスラエルがガザ南部で進める「人道都市」建設計画だ。まずは
60万人を収容し、最終的には200万人を超える全住民を収容したい考えだという。
 いったん入れば、外に出ることは認められない。ホロコースト(ユダヤ人大量虐殺)
を行ったナチス・ドイツの「強制収容所」だとの批判が強い。「民族浄化」が目的だと
の見方もある。国連報道官は「強制移住には断固反対」と表明した。
 首相はハマスが譲歩しない限り戦闘を続ける意向だ。だが人質全員の解放を求めるイ
スラエルの市民らはハマスとの即時停戦を要求、反ネタニヤフの声は高まる一方だ。
 首相はイラン攻撃成功の勢いが残るうちに総選挙を実施したい考えだが、最新の世論
調査では74%がガザ戦闘終結のための停戦を支持している。