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2024.03.09

評論「米大統領選挙」 ◎バイデン、トランプ再び一騎打ちに評論 国際協調派の指導者が必要だ

執筆:佐々木 伸 教授 (星槎大学大学院 教育学研究科)

 米大統領選挙予備選のヤマ場スーパーチューズデー(3月5日)は注目の野党共和党ではトランプ前大統領(77)が圧勝、民主党は再選を目指すバイデン大統領(81)が勝利し、11月の本選挙は2人による再対決の構図が固まった。

 世論調査などによると、高齢者同士の一騎打ちに有権者はウンザリしているが、超大国である米国の指導者には自国のことだけではなく、世界全体に目配りする責務がある。今、ウクライナ、ガザという2つの戦争で混迷する世界を見るとき、必要なのは共生と国際関係を重視する協調派の大統領だろう。決して「米国第一主義」を唱える大統領ではないはずだ。

 ▼「もしトラ」に現実味

 最近、世界中で語られている言葉に「もしトラ」がある。トランプ氏が返り咲けば、米国内外でさまざまな問題にさらされることを揶揄(やゆ)した表現だが、不安や恐怖の裏返しでもある。

 同氏は議会襲撃など4つの事件で起訴され、出馬資格の是非が問われていたが、このほど連邦最高裁が出馬を認める判断を示した。その意味で今回は後顧の憂いを断ち切っての勝利だった。

 氏の主張は「米国を再び偉大に」「米国第一主義」と歯切れが良く、大衆受けしやすい一方、過激な言動は民主国家の指導者としては著しく不適切だ。バイデン氏への「復讐」を唱え、司法省や情報機関を“解体”するといった発言は看過できない。

 だが、このところの世論調査の支持率ではトランプ氏がバイデン大統領を終始リードしており、「もしトラ」が現実味を帯びている。敵か味方かを峻別するトランプ氏の再登場がなれば、米政治や社会の分断は一段と深刻なものになるだろう。

 ▼国際社会は大混乱に

 トランプ氏の復権は日本を含め国際社会にも大混乱を引き起こすだろう。同氏は最近、大統領在任中、欧州首脳に対し、軍事費を負担しなければ「ロシアをけしかけてやる」などとどう喝したことを自慢したが、同盟国を軽視した暴論に他ならない。プーチン・ロシア大統領は欧米の分断を望んでおり、トランプ氏の復活を誰よりも待ち望んでいるはずだ。

 中国に対しても輸出品すべてに60%の関税をかけるといった発言を繰り返しており、米中貿易戦争が激化するのは必至。日本も安穏としてはいられない。「お友達」として話ができた安倍晋三氏はもうおらず、政府当局者らは米国の“用心棒代”の増額を要求してくるのではないかと戦々恐々だ。

 ▼81歳の反転攻勢に期待

 15州の予備選が集中したスーパーチューズデーまでトランプ氏と戦ってきたヘイリー元国連大使は2勝しかできず、共和党指名争いからの撤退を余儀なくされた。党内にトランプ氏を諫めたり、けん制したりする勢力は見当たらない。同氏の「党の私物化」が進んでいる現状は極めて不健全と言わざるを得ない。

 勢いのある同氏にバイデン大統領は押され気味だ。大統領が現職の強みを発揮できていないのは国民が物価抑制策に満足せず、最重要課題とする移民問題などの政策が不人気なことがある。だが、何と言っても高齢問題への不安を払しょくできていないのが大きい。トランプ氏は「バイデンは自分が生きているのかさえ分からない」と老いを嘲笑しているが、大統領は有効に反撃できていない。米紙によると、前回大統領に投票した有権者の過半数が再出馬に難色を示しており、このことはいかに年齢問題が有権者の関心の的になっているかを示すものだ。

 議会で行われた7日夜のバイデン大統領の一般教書演説(施政方針演説)はこうした懸念を払拭する機会だった。大統領は開始直後、名指しを避けつつ「民主主義の脅威」としてトランプ氏を激しく攻撃した。口調は力強く、精力的だったが、空回り感はぬぐえなかった。政治家としての気骨は示したものの、国民を説得できたかというと、疑問符が付くだろう。だが、米国の民主主義を守り、世界の平和に尽力できるのは「米国第一主義」のトランプ氏ではなく、国際協調派のバイデン氏しかいない。81歳の反転攻勢に期待したい。