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2023.12.06

評論 ◎パレスチナ人の「虐殺」をやめよ ―イスラエルは民主国家の振る舞いを―

執筆:佐々木 伸 教授 (星槎大学大学院 教育学研究科)

▼戦争、第二段階に

  イスラエル軍とイスラム組織ハマスの戦闘がパレスチナ自治区ガザで再開し、戦争は第二段階に移行した。同軍は住民が避難している南部へ侵攻、攻撃を強化しており、民間人の犠牲者がさらに増える恐れが強い。

 パレスチナ側ではすでに多数の子供たちを含め1万6千人以上が死亡、これ以上の「虐殺」(国連当局者)は看過できない。いまだハマスに拘禁されている人質の状況も心配だ。

 イスラエルは中東唯一の民主国家を自認している。もしそうならば、人命尊重や人権重視、他民族との共生など民主国家が本来持つべき基本的な理念を忘れてはなるまい。報復を叫んでパレスチナ人の殺戮を繰り返すだけなら民主国家を標榜するのに値しない。重要な国際社会の一員として停戦を求める声に耳を傾け、南部への侵攻をやめるべきだ。

 イスラエル軍はこれまで、ガザを南北に分断し、ハマスの本拠があるとみていた北部を無差別爆撃、地域の建物6割を破壊し、戦闘員数千人を殺害した。だが、その攻撃はパレスチナ人への「集団懲罰」に等しく、多くの住民はがれきの下に取り残されたままだ。

両者は米国やカタールの仲介で7日間、戦闘を休止し、人質の一定の解放にこぎ着けたが、戦闘が再開、130人余りの人質が未解放なのは極めて残念だ。

▼戦火の中、病人や子供に移動を命令

 イスラエルの誤算は北部の戦いで、ハマス指導者を殺害し切れなかったことだ。指導者らは南部に逃走した疑いが強い。このためイスラエル軍は南部へ侵攻し「ハマス壊滅まで戦闘を続ける」(ネタニヤフ同国首相)方針だ。

 しかし南部にはイスラエルによって北部から半ば強制的に退避させられた住民ら約180万人が避難生活を強いられており、イスラエル軍の戦線拡大で民間人の被害が急増するのは必至だ。

 軍は住民に対し、安全のため南部最大の都市ハンユニスなどから再び移動するよう命令しているが、戦火の中、病人や子どもには不可能だろう。

 ▼「和平」「共生」を夢物語にするな

 最悪のシナリオはイスラエル軍に追い詰められ、逃げ場を失った住民らが南のエジプト国境に殺到、検問所を破ろうとして警備するエジプト軍と衝突することだ。混乱が広がり、両軍の戦闘にも発展しかねない。

 さらに懸念されるのはもうひとつのパレスチナ自治区であるヨルダン川西岸での緊張だ。イスラエル軍がパレスチナ武装勢力への攻撃を強化し、ユダヤ人によるパレスチナ人農民への襲撃も頻発、これにパレスチナ人もテロで応じるなど暴力の連鎖が止まらない。

持続的な停戦が実現しなければガザや西岸での惨状は悪化し、ユダヤ人とパレスチナ人の「和平」や「共生」は夢物語になってしまう。

ここはイスラエルに唯一影響力を持つ米国がネタニヤフ政権に強い圧力を掛け、説き伏せるしかない。それが世界平和を主導する米国の責務だ。