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2018/03/25

コラム「教育実践」Vol.8「実践と理論を学べる大学院を拓くということ」

Tweet ThisSend to Facebook | by 事務局(天野)

実践と理論を学べる大学院を拓くということ
~教育実践研究科の開設1年を迎えて~


教育実践研究科・准教授 石原朗子


星槎大学大学院に教育系専門職大学院である教育実践研究科ができて1年が経ちました。
2018年3月には日本教育大学院大学からの転学生を初の修了生として送りだしました。

 このコラムでは専門職大学院でどんな人が学んでいるか、どんな思いの人が学んで
いるかを紹介し、自身が研究での専門職大学院への実感との関連性を述べたいと
思います。

 教育系と言えば、皆さんは教職大学院という言葉を聞いたことがありますか。
教職大学院とは、一条校の学校教員を対象とした専門職学位課程で、主に学部卒業の
新人教員の養成と現職教員でスクールリーダー(中核的中堅教員)となる者の養成を
する大学院です。
 翻って本研究科は「教育系」の大学院と書きました。何が違うんだろう、と思った方も
いるでしょう。本研究科も専門職学位課程の1つですが、教職大学院のような幼小中高の
先生方のほか、保育現場の方、専門学校や短大など高等教育機関の先生方、看護などの
現場で研修を含めた現場の教育実践に関わる方を含め、多様な教育現場に関わる方が
学んでいます。特徴的なのは、2017年度の学生の7割以上、新入生では9割以上が社会人
ということです。これは図1の専門職学位課程での社会人割合に対しても際立っています。

fig1専門職学位課程の分野別社会人割合(平成29年度,学校基本調査より筆者作成)
図1 専門職学位課程の分野別社会人割合(平成29年度,学校基本調査より筆者作成)

では、社会人が学ぶ場ではどんな特徴があるのでしょうか。私自身、社会人と学びあう
機会が多かったため一概には比較しては言えませんが、多くの場合、社会人の方は、
経験に基づいてよく語ります、思いを語りだしたら熱いです。例えば、私の担当する
「教育社会学特論」では、本田由紀先生の「垂直的多様性と水平的多様性」1)の考え方を
紹介しましたが、授業期の後半には、複数の方がこれを使って現代の教育について熱く
語っていました。授業が年度後半のため理論や社会状況と絡めて語られる方も多かったです。

私はまた、通年の「プロジェクト研究」も担当しましたが、そこで感じたのは、学生の
熱い語りの変化です。つまり、1年生を例にとれば、最初は現場の現状のみを語る段階、
やがてそこから問題が焦点化されていく段階、さらに現場の問題と既存の研究成果や
実践成果をつなげて考える段階と変化していく様子が見られました。今後は、現場で
実践を行い、再び理論や他の実践と絡めながらさらに考えていく段階に至ると思われます。
 
このような教育系専門職大学院の実態は、今まで専門職大学院研究をしてきた私には
「新鮮さ」と「納得」と「もっと知りたい」を持って映りました。

 今まで社会人大学院の研究では、社会人が学ぶ目的として「職業上の経験の理論的整理」
が多く指摘されていましたが、これらの指摘は外部者から観た場合が多かったと思います。
私自身、今まで専門職大学院の外からそこを見ていましたので、点での付き合いでした。
ただ、そうした点での付き合いではありましたが、インタビューで印象に残っていた内容が
2つありました。1つは「課題解決能力よりも課題を抽出(設定)する能力が大切なのだ」
という指摘、もう1つは「知識よりも知恵が重要なのだ」という指摘でした。

 ここで「新鮮さ」についてですが、実際に専門職大学院という現場に携ると、理論的整理
を行うと言っても、修士課程のように現場の課題を取り出してリサーチクエスチョンを立て
検証して論文にまとめるのではない、現場と理論の学びを行ったり来たりしながら徐々に
整理していく姿を見ることができました。ここに専門職大学院の、教育実践研究科の、
修士課程との違いを見つけることができ、「新鮮さ」を感じました。

 次に、上記の過程で、課題を解決する以上に、込み入った状況下での多くの課題から
いかに優先的に整理・解決すべきことを取り出せるかが重要となることを再認識し、
課題設定(抽出)能力の向上が社会人が大学院で学ぶことの大きな意義の1つだと
「納得」しました。

 そして、最後の「もっと知りたい」は、インタビューで伺った知恵の大切さと関わります。
これについては、まだ落とし込めていませんが、今後の2年生と共に実践の向上を目指す中で、
気づきを得られればと思っています。

 専門職大学院、特に星槎大学大学院教育実践研究科のいいところは、学校種の垣根を、
教員と学生という垣根を超え、教育実践の向上に向かっていけることだと実感しています。
 私はこの大学院研究科に設置の時点から関わり拓いてきましたが、このような大学院の
開設に関われたこと、そして教員として学生から学び、学生と共に学んでいけることを
非常にうれしく思っています。

 教育実践研究科という専門職大学院はまさに実践と理論を学べる場です。
そして、そこで学びを拓く、その後の世界を拓くのはあなた自身です。
ぜひ、大学院の扉を開き、学びを拓いてください。一緒に大学院で学びましょう。

1)本田由紀「教育と職業との関係」(佐藤学ほか編著『社会のなかの教育』,岩波書店,2016年に所収)



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